こんにちは、公認心理師のかぼです。
誰かと比べて落ち込んだり、未来を考えて不安が押し寄せたりすることはありませんか?
- 「こんな給料でこれから大丈夫かな…」
- 「友達は楽しそうなのに、なんで私だけ失恋したんだろう」
- 「仕事で失敗してしまった…もう立ち直れない」
そんな不安をやわらげる方法のひとつが、心理学でいう「下方比較(かほうひかく)」です。これは人を見下すものではなく、セルフケアのスキルとして研究されている手法です。
不安の正体と「第二の矢」
仏教の教えに「第二の矢」というお話があります。人は予期せぬ出来事(第一の矢)に苦しむだけでなく、その後「どうして私だけが…」「また失敗するかも」と自分に矢を放ち、苦しみを増やしてしまうのです。
つまり、不安の多くは出来事そのものではなく、自分の思考が生み出すもの。ここに気づくことが第一歩になります。
なぜ人は不安を抱くのか?
動物は「今この瞬間」を生きています。しかし人間は知性がある分、過去を後悔し未来を不安視してしまいます。これは人間の強みであると同時に“呪い”にもなり得ます。
そこで役立つのが「下方比較」です。状況を相対的にとらえることで、「自分は案外大丈夫かもしれない」という視点を持てるのです。
下方比較とは?
心理学者フェスティンガーの「社会的比較理論」に由来する考え方で、自分より厳しい状況にある人を思い浮かべることで、現状の受け止め方を変える方法です。
例えば…
- 通勤で嫌なことがあったとき、「通勤できない人もいる」と考えてみる
- 失恋で落ち込んだとき、「恋をする心があること自体すごい」と気づく
- 子育てで怒ってしまったとき、「そばで育てられること自体ありがたい」と思う
ここで大切なのは「他人を見下す」ことではなく、「自分の状況を肯定する視点」を持つことです。
私自身の体験
私は過去にがんの再発検査を受けることになったとき、恐怖で心が押しつぶされそうになったことがあります。しかし「世界には治療を受けられない人もいる」と思い至った瞬間、心の中に感謝の気持ちが生まれ、不安が少し和らぎました。
不安が消えるわけではありませんが、「ありがたい」という視点が入ると、恐怖に飲み込まれずにいられるのです。
下方比較の効果と注意点
人の幸福感は「相対的」に決まることが研究で分かっています。しかし下方比較を「人を見下す材料」にしてしまうと逆効果。大切なのは感謝と共感をセットにすることです。
日常で使えるワーク
- ワーク1:困ったときの「3人想像法」
不安なとき、自分より大変な状況にある3人を思い浮かべてみる。 - ワーク2:過去の自分と比べる
「不登校だった中学時代の自分」と「今の自分」を比べるなど。 - ワーク3:感謝日記とセットで
「今日も食事ができた」「空がきれいだった」と感謝を記す。
まとめ
不安は「大切なものがある証」でもあります。大事なのは、それに押しつぶされない工夫です。下方比較を「やさしい視点」として取り入れることで、不安を和らげ、自分をいたわることができます。
あなたの心が少しでも軽くなることを願っています。
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