「幸せって、どこにあるんだろう?」──そんな問いに、アドラー心理学はひとつの灯りをくれます。それが共同体感覚。
それは知識ではなく、体で感じる“つながりの感覚”です。「自分は誰かとつながり、支え合って生きている」と腑に落ちた瞬間、心がじんわり温かくなります。
共同体感覚とは?
アドラー心理学では、人生の最終的な目標をこの感覚に置きます。定義を一言で言えば、「私は大きなつながりの一部で、誰かに支えられ、誰かを支えている」という実感。頭で理解する知識ではなく、日常の出来事を通して「ありがたい」と心が動いたときに芽生えます。
共同体感覚がもたらす4つの心の変化
- 感謝が深まる:形式ではなく、内側から「ありがたい」と感じられる。
- 人が好きになる:信頼が育ち、警戒より温かさが勝ちやすくなる。
- やる気が湧く:「自分も誰かの役に立ちたい」という前向きな行動につながる。
- 日常がおいしくなる:食事や会話など、当たり前がひとつ上の豊かさに変わる。
例え話①:あやさんの旅
昔、あやさんは自分で紙を漉き、山を越えて手紙を届けました。「自力率」100%。
昭和になると郵便が整い、紙も封筒も店で買える。「自力30%・他力70%」。
現代はメール。設計・組立・電波・海底ケーブル・発電…無数の仕事の上で送信ボタンを押すだけ。「自力0.1%・他力99.9%」。
私たちの生活は、見えない多くの他者の力に支えられています。
例え話②:水耕栽培で気づいたこと
筆者はベランダで小松菜やバジルを育てています。容器、ハイドロボール、養液、種、電気や水道──どれも自分ひとりでは用意できないもの。
研究や製造、物流の積み重ねがあって、ようやく葉が育つ。自力は0.1%、残りは人の知恵と労力。そう実感したとき、「自分が作った」ではなく「世界の仕事が集まって実った」と感じ、自然と感謝が湧きました。
スマホに詰まった「世界のつながり」
スマホには各国の技術、素材、製造、通信インフラが結晶のように折り重なっています。私たちが毎日触れている道具ひとつにも、国境を越えた共同体の働きが宿っています。この視点は、苛立ちや孤独感を和らげ、日常に静かな安心をもたらします。
共同体感覚を育てる3つのコツ
- 「当たり前」を丁寧に見る:歯ブラシやお茶碗の来歴を想像する。素材、工場、物流、店員…見えない手間を思い描く。
- 言葉に温度を戻す:「ごちそうさま」の語源は「馳せ走る」。誰かが走って集め、整えてくれた恵みに意識を向ける。
- 小さな貢献を日課にする:挨拶、道を譲る、レビューを書く、ゴミを一つ拾う。微小な善意がつながりの感覚を強める。
まとめ:つながりに気づくと、幸せは近づく
道路、電気、食事、住まい──私たちは最初から共同体の網の中にいます。その事実に気づくほど、感謝が増え、「自分も支えたい」という自然な意欲が生まれます。
アドラーのいう共同体感覚は、特別な修行ではなく、日常を少し丁寧に味わう姿勢から育つ最高の幸福感。今日の一日が、いつもより少し温かく感じられますように。
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