こんにちは、公認心理師のかぼです。
本日は「不安に疲れたあなたへ。心が静まる、たった1つの習慣」というテーマでお話しします。
私たちの心は、とても不器用なときがあります。
たとえば、テストで80点を目指していたのに73点しか取れなかったとき。「才能がない」と落ち込んでしまう。
同僚に挨拶したのに返事がなかったとき。「嫌われたのかも」と不安になる。
そしてさらに、その不安に反応して「私ってダメだ」と自分を責めてしまう…。
実は、その「反応」こそが心を一番苦しめていることが多いんです。
では、どうすればこの悪循環から抜け出せるのでしょうか。
ここで役に立つのが「ACT(アクト)」と呼ばれる心理療法です。
ACTとは?
ACTは「Acceptance(受け入れ)」と「Commitment(価値に向かって進む)」の頭文字をとったもの。
「ネガティブな感情を消す」のではなく、「感情を受け入れながら、自分の価値に沿って行動する」ことを目指します。
不安や緊張、怒りや後悔…。誰だってできれば避けたい感情ですよね。
ですが、避けようとするほど心のエネルギーを消耗し、ますます動けなくなってしまいます。
ACTは、それらを「悪者」とせず、「いてもいい」と認めながら共に生きる術を身につけていく方法なんです。
実際のエピソード① 主婦の方の例
ある40代の女性は、子育てとパートを両立しながらも「何をしても足りない気がする」と悩んでいました。
朝起きた瞬間から不安を感じ、笑う時間も減っていたそうです。
そこで一緒に行ったのが「不安を消そうとしない練習」。
不安が浮かんできたときに「そんな考えがあるな」と観察する。
「不安よ、いまそこにいるね」と声をかける。
ただそれだけですが、繰り返すうちに“不安に飲み込まれずに選べる自分”を取り戻していきました。
そして「家族と穏やかに過ごしたい」という価値に気づき、少しずつ自分らしい生活を取り戻していったのです。
実際のエピソード② 大学生の例
ある20代の大学生は「自分は何をやってもダメだ」と思い込み、不安で大学に行けなくなっていました。
ACTでは「思考と距離をとる練習」から始めました。
「自分はダメだ」という言葉に「お決まりくん」と名前をつけたのです。
頭に浮かんだとき「またお決まりくんが来たな」と言うと、思考に巻き込まれずにすみます。
さらに「人の役に立ちたい」という価値に基づき、小さなボランティアに挑戦。
「不安があっても動けた」という経験が自信を回復させ、やがて大学にも戻れるようになりました。
ネガティブ感情との付き合い方
ACTの基本姿勢は「ネガティブ感情をなくそうとしないこと」。
消そうとすると逆に強くなるため、次のステップを実践します。
- ① 気づく:「あ、不安があるな」
- ② 名前をつける:「これは“完璧でいたい気持ち”だな」
- ③ 受け入れる:「いてもいいよ」と許可する
- ④ 距離をとる:「この考えが浮かんでいるんだな」と一歩引いて見る
こうして感情に流されずに、自分の選択を取り戻すことができます。
不安や悲しみは「大切なものがあるからこそ」生まれる感情。
ACTはその感情に意味を見出すアプローチでもあります。
ACTの6つの柱
ACTには6つのコアプロセスがあります。
- 脱フュージョン(思考と距離を取る)
- 受容(感情との共存)
- 現在への集中(マインドフルネス)
- 自己としての文脈(揺るがない視点)
- 価値の明確化(自分の大切にしたいあり方)
- コミットメント(価値に沿った行動)
これらは心の柔軟性を育て、「感情に振り回される人生」から「感情と共に歩む人生」へと導きます。
まとめ
ACTは、不安やネガティブ感情を消すのではなく、受け入れながら自分の価値に沿って行動していく心理療法です。
感情があっても「私は私のやりたいことを選べる」と思えるようになること。
それが心を静かに強くしてくれる習慣です。
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