理由ははっきりしないのに、心が落ち着かない。
考えなくていいことまで、頭の中で何度も繰り返してしまう。
気づけば、不安と自己否定で心がすっかり疲れている。
そんな状態に、心当たりはありませんか。
私たちの心は、とても真面目で、そして少し不器用です。
ほんの小さな出来事でも、そこから一気に不安を広げ、
「自分はダメだ」「この先もうまくいかない」
そんな結論へと、あっという間に飛んでしまいます。
実は、多くの人を苦しめているのは、
不安そのものではなく、不安に対する“反応”です。
この記事では、公認心理師の立場から、
不安を無理に消そうとせず、
心を静かに整えていくための心理療法、
ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)について、
検索でたどり着いた方にも分かるよう、丁寧に解説していきます。
なぜ私たちは、すぐに不安で自分を責めてしまうのか
たとえば、こんな経験はないでしょうか。
「次は80点を取ろう」と思っていたテストで、73点だったとき、
点数を見た瞬間に、
「自分には才能がないのかもしれない」
そんな考えが浮かんでくる。
あるいは、職場で挨拶をしたのに返事が返ってこなかっただけで、
「嫌われたのかも」と胸がざわつく。
冷静に考えれば、
たまたま相手が気づかなかっただけかもしれない。
73点だって、決して悪い点数ではありません。
それでも心は、
最悪のストーリーを自動的に作り出してしまいます。
そして、そう考えてしまう自分に対して、
さらに「なんでこんなことで落ち込むんだ」と責めてしまう。
この「感情 → 思考 → 自己否定」の連鎖こそが、
私たちの心を一番消耗させている正体です。
不安を消そうとするほど、心が苦しくなる理由
多くの人は、不安やネガティブな感情を
「なくすべきもの」「感じてはいけないもの」
として扱おうとします。
「前向きにならなきゃ」
「気にしないようにしよう」
「こんなことで不安になるなんて弱い」
しかし、心理学的に見ると、
感情は消そうとすればするほど強くなる性質があります。
これは、風船を水の中に押し込むのに似ています。
押さえつけている間は見えなくなりますが、
手を離した瞬間、勢いよく浮かび上がってくる。
不安も同じです。
無理に抑え込もうとすると、
別の形で、より強く現れてしまいます。
ACTは、この悪循環から抜け出すための、
まったく違うアプローチを取ります。
ACTとは?|不安を「なくさない」心理療法
ACTは、
Acceptance(受け入れ)と
Commitment(価値に向かって進む)
の頭文字を取った心理療法です。
ACTの最大の特徴は、
ネガティブな感情や思考を消そうとしないことにあります。
不安、緊張、怒り、後悔。
どれも、できれば感じたくない感情ですよね。
でもACTでは、これらを「敵」にはしません。
「感じてもいい」
「そこにあっても大丈夫」
そうやって感情に居場所を与えながら、
自分が本当に大切にしたい方向へ進んでいく。
それがACTの基本的な考え方です。
この考え方は、トップアスリートのメンタルサポートにも使われています。
プレッシャーの中で思考や感情をコントロールしようとするのではなく、
「そのままにしておく」ことで、
本来の力を発揮しやすくなるのです。
ACTが大切にする「今、この瞬間」
ACTでは、「今、この瞬間」に意識を向けることを重視します。
私たちの苦しみの多くは、
過去の後悔や、まだ起きていない未来への不安から生まれます。
「あのとき、ああすればよかった」
「この先、失敗したらどうしよう」
心が常に過去や未来をさまよっていると、
不安はどんどん膨らんでいきます。
ACTでは、呼吸や感覚、目の前の出来事に注意を向けることで、
心を「今ここ」に戻していきます。
それだけで、驚くほど気持ちが落ち着くことも少なくありません。
ACTによって変化した2つの事例
ここで、ACTを通して心のあり方が変わっていった、
2人の方のエピソードをご紹介します。
40代主婦の方のケース
子育てとパートを両立し、とても真面目で責任感の強い方でした。
周囲からの評価は高いのに、
ご本人は常に「何かが足りない」と感じていました。
朝起きた瞬間から不安があり、
失敗を恐れて自分を追い込み続けていたそうです。
ACTで最初に行ったのは、
「不安を消そうとしない練習」でした。
不安が出てきたときに、
「不安がいるな」と気づき、
「そこにいてもいい」と声をかける。
それを続けるうちに、
不安に振り回されず、
自分で選択できる感覚が戻ってきました。
そして、「家族と穏やかに過ごしたい」という価値に気づいたことで、
少しずつ自分らしい生活を取り戻していったのです。
20代大学生のケース
努力家で真面目な学生でしたが、
「自分は何をやってもダメだ」という思考に支配され、
大学に行けなくなっていました。
ACTでは、まず「思考と距離を取る練習」から始めました。
「自分はダメだ」という考えに、
「お決まりくん」という名前をつけ、
事実ではなく“考え”として扱う。
それによって、少しずつ心に余白が生まれ、
「人の役に立ちたい」という価値に沿って、
小さな行動を始めることができました。
ネガティブ感情の扱い方|ACTの基本姿勢
ACTの基本は、
ネガティブ感情をなくそうとしないことです。
ACTでは、次のようなステップを大切にします。
- 気づく:「不安があるな」と認識する
- 名前をつける:「完璧でいたい気持ちだな」と整理する
- 受け入れる:「いてもいい」と許可を出す
- 距離を取る:「そう考えている自分がいる」と眺める
ネガティブ感情は、
大切なものがあるからこそ生まれる反応です。
ACTは、感情を排除するのではなく、
意味を尊重する心理療法なのです。
ACTの6つのコアプロセス
- 脱フュージョン(思考と距離を取る)
- 受容(感情を追い払わない)
- 現在への集中(今ここに戻る)
- 自己としての文脈(観察する視点)
- 価値の明確化(大切にしたい生き方)
- コミットメント(価値に沿った行動)
ACTは、「心の強さ」ではなく、
心の柔軟さを育てるアプローチです。
まとめ|不安があっても、人生は選べる
不安があるからといって、
あなたが弱いわけではありません。
ACTは、不安と共に生きながら、
自分らしい人生を取り戻すための心理療法です。
不安があっても、私たちは選ぶことができます。
それがACTの大きな力です。
YouTubeでさらに詳しく解説しています
ACTについては、YouTubeでも、
具体例や実践イメージを交えて詳しく解説しています。
声で聞くことで、理解しやすい方も多いと思います。
ぜひ、あわせてご覧ください。
👉 心理カウンセラーかぼのYouTubeチャンネルはこちらhttps://www.youtube.com/@cabo.psychology


