「このままで、本当に大丈夫なんだろうか」
誰かと比べたわけでもないのに、
急に胸の奥がざわざわしてくる。
理由ははっきりしないのに、不安だけが残る。
将来のこと。
お金のこと。
人間関係のこと。
仕事の失敗。
過去の後悔。
一つひとつは小さなきっかけでも、
気づくと頭の中は、不安でいっぱいになってしまう。
こんにちは。公認心理師のかぼです。
この記事では、
不安に飲み込まれそうになったとき、たった20秒で心を少し落ち着かせる「心の知恵」をお伝えします。
それが、心理学でいう「下方比較(かほうひかく)」です。
といっても、
「誰かを見下す」とか
「自分はまだマシだと言い聞かせる」とか、
そういう話ではありません。
これは、
不安で狭くなってしまった視野を、もう一度現実に戻すためのセルフケアです。
不安の正体|私たちは「第二の矢」で自分を傷つけている
まず知っておいてほしいのは、
不安そのものは、決して悪いものではないということです。
不安は、
あなたが人生を真剣に生きている証。
大切なものを守ろうとしている証拠でもあります。
でも――
不安が苦しさに変わる瞬間があります。
仏教には「第二の矢」という有名な教えがあります。
人生では、誰にでも避けられない出来事が起こります。
- 失恋してしまった
- 仕事で大きなミスをした
- 病気が見つかった
- 人間関係で傷ついた
これらはすべて「第一の矢」。
どれだけ気をつけていても、防げない出来事です。
問題は、そのあと。
私たちは心の中で、
無意識のうちに、こんな言葉を自分に向けてしまいます。
- 「どうして私だけが、こんな目に…」
- 「他の人はうまくいっているのに」
- 「やっぱり私はダメなんだ」
- 「この先も、きっと良くならない」
これが「第二の矢」です。
出来事そのものよりも、
その出来事に対する“解釈”が、苦しみを何倍にもしてしまう。
不安で苦しいとき、
実は私たちは、
自分自身に何本も矢を放っているのかもしれません。
人間だけが「まだ起きていない未来」に苦しむ
神経科学者ロバート・サポルスキーが紹介した、
とても印象的なエピソードがあります。
野生の猿が大けがをして、下半身が動かなくなってしまったときの話です。
自然界では、生き延びるのは難しい状態でした。
ところがその猿は、
群れの仲間に守られ、
食べ物を分けてもらい、
毛づくろいをされながら、穏やかに暮らしていました。
研究者が驚いたのは、
その猿の表情でした。
そこには、
「なぜ自分だけが歩けないのか」という嘆きも、
「この先どうなるんだろう」という不安も、ありませんでした。
動物は、「今」を生きます。
でも、人間は違います。
私たちは、
過去を思い返して後悔し、
まだ起きていない未来を想像して、不安になります。
この想像力は、人間の大きな強みです。
同時に、心を疲れさせる原因にもなります。
だからこそ、
思考との付き合い方を知ることが、とても大切なのです。
不安をやわらげる心理学「下方比較」とは
下方比較とは、
心理学者フェスティンガーの「社会的比較理論」に基づく考え方です。
簡単に言えば、
自分よりも大変な状況を思い浮かべることで、視点を現実に戻す方法です。
たとえば、こんなとき。
- 失恋して「もうダメだ」と思ったとき
- 仕事で失敗して「終わった」と感じたとき
- 将来を考えて不安で眠れない夜
そんなときに、
世界を少し広く見てみる。
戦争や紛争の中で、
十分な治療も受けられずに苦しんでいる人がいる。
明日の食事が分からない人がいる。
そう考えたとき、
今の自分の状況が、少し違って見えてくることがあります。
これは、
「我慢しろ」という話ではありません。
「今の自分は、完全に詰んでいるわけではない」
その事実を、思い出すための視点です。
私自身が下方比較に救われた体験
私自身、がんの再検査を受けることになったとき、
足が震えるほどの恐怖を感じました。
「もし再発だったらどうしよう」
「また治療が始まるのか」
「もう、こんな思いはしたくない」
頭では分かっていても、
不安は勝手に膨らんでいきます。
正直、
「いっそ何もせず、痛くなったら緩和ケアだけでいい」
そんなことさえ、本気で考えていました。
でも、ある瞬間、ふと思ったのです。
世界には、
がんになっても病院に行けない人がいる。
治療を受ける選択肢すらない人がいる。
日本のように、
国民皆保険で治療を受けられる国は、決して多くありません。
そのとき、こう思いました。
「こんなに怖いと感じられるのは、
ちゃんと治療を受けられる立場にいるからなんだ」
恐怖が消えたわけではありません。
でも、
心の奥でガチガチに固まっていたものが、
すーっと緩んでいくのを感じました。
下方比較は、
不安を消す魔法ではありません。
でも、
不安に飲み込まれずに立ち止まる「足場」を作ってくれます。
下方比較が不安に効く理由
私たちの脳は、
「絶対的な幸せ」よりも、
相対的な安心感で落ち着きやすい性質があります。
同じ状況でも、
どう捉えるかによって、
感じ方は大きく変わります。
不安でいっぱいのとき、
視野は自然と狭くなります。
下方比較は、
その視野を、
「今ここ」に戻してくれる働きをします。
下方比較を使うときの大切な注意点
ただし、使い方には注意が必要です。
- 他人を見下すために使わない
- 優越感で自分を保とうとしない
キーワードは、
「感謝」と「共感」です。
「大変な人がいる」
「でも、今の私は、ここにいる」
この視点が、
下方比較を「やさしいセルフケア」に変えてくれます。
日常で使える下方比較のワーク
① 3人想像法
不安なとき、
自分よりも大変な状況にいる人を3人、思い浮かべてみてください。
② 過去の自分と比べる
他人ではなく、
過去の自分と比べるのも、立派な下方比較です。
③ 感謝とセットで使う
最後に、「ありがとう」と思えたことを一つ、言葉にしてみてください。
まとめ|やさしい第二の矢を、自分に向けてあげよう
不安は、弱さではありません。
でも、不安に対して、
さらに自分を責める矢を放つか、
それとも心をいたわる矢を選ぶかは、
あなた自身が決めることができます。
「比べる」ことを、
自分を傷つける材料ではなく、
自分を守る知恵として使ってみてください。
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